こんこんと受け継がれる伝統芸能の魅力(後編)


『国文祭・芸文祭 みやざき2020』では、『能楽の世界』と題された能楽の公演が開催されます。今回は能楽師シテ方観世流の重要無形文化財総合認定保持者でもある、宮崎県出身の久保誠一郎さんにお話を伺いました。後編では、さらに深い能楽の魅力についてお伝えします!

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様式美の世界

今回の公演は全部で2時間30分ほど。能では『養老』『羽衣』、狂言では『隠狸』、『石橋』の順に上演されます。一番の見所を伺うと、「もちろん、全部ですよ」と返ってきました。

「舞囃子(まいばやし)は、一曲の中のメインシーンを紋付袴または裃(かみしも)で、囃子つきで舞うというものなので、それだけでも随分と見応えがありますよ。能楽はジャパニーズミュージカルといった感じでしょうか。能の場合は決まり事で出来ていることが多く、江戸時代にお殿様の前で舞う際、この決まり事を間違えたりしたら大変なことになりました。とにかく決まり事が守られたかどうか。その様式美も味わっていただけたらいいのではないでしょうか。」

積み重ねることで見えてきたもの

それから、「能楽はとにかく、セリフを覚えるのがすごく大変で…」と久保さんは続けます。

「能楽では、『謡本(うたいぼん)』という台本と楽譜のような役割の本を、舞台に上がる前に全て暗記しておかなければなりません。能楽師の方々は、全国各地にお住まいで、公演ごとに集うことになります。基本的には、一度の申し合わせのみで、本番に挑むことになるため、申し合わせまでにそれぞれの役割を完璧に演じられることが前提となります。」

演じられる曲は240曲ほどある中で、久保さんは100曲強を暗記していて、何時間か読み直すだけで、100曲強全ての曲を思い出せるそうです。

「能の文章というのは、暗記をすることや、節を正確に謡(うた)うというところに、とにかくこだわります。謡は“かけ言葉”(一つの言葉に同時に二つの意味をもたせる修辞法)にもなっていますので、すごくわかりにくいんですね。私は今年で50歳になるのですが、舞うことや謡うことが楽しくなってきたところなんです。この世界では、この歳になってようやく中堅、というところなので、私もまだまだ勉強しなければなりませんね。」

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厳しいからこそ意義がある

祖父の代から続く能楽師の家系ですが、狂言や囃子は、東京に養成所があり、久保さんの後輩にも能楽師を志す方がいらっしゃるなど、現在でも能楽師の育成は続けられているのだそう。それでも「よっぽど好きじゃないと続けられないでしょうね。」とおっしゃるのは、厳しい決まり事の世界で生きてこられたからなのかも知れません。稽古を重ねてきた幼少期からのことを振り返り、「辛い時もありましたが、なんだかんだ『能』が好きだったのでしょう。ここまで続けさせていただくことができましたのも、師匠の大槻先生や諸先輩方、お弟子様方のおかげです。」とも話してくださいました。
最後に、能楽の舞台を観たことのない方へ向けたメッセージをお伺いしたところ

「私は初シテが17歳で、青島神社の能楽堂で『菊慈童(きくじどう)』を舞いましたし、初舞台は4歳で記憶はありませんが、宮崎のNHKホールでした。その時にも県外から先生方に来て頂いての公演でしたが、本当になかなか…大変なことなのですよ。ですから、今回の『能楽の世界』に出演するメンバーをまた宮崎で集めることはかなり難しいと思います。せっかくの機会ですから、たくさんの方に足を運んでいただけると嬉しいですね。マナーをお守りいただいて、気楽な感じで来ていただければいいのかな」と笑って話してくださいました。
宮崎ではなかなか触れることのできなかった能楽の世界ですが、能楽師の久保先生に直々にお話を伺えたことでよりその魅力について知ることができたような気がします。この夏にはぜひ皆さんも、この奥深い伝統文化の世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか?

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「能楽の世界」
期間:2021年8月29日(日)
開場:13:20 開演:14時00分
会場:メディキット県民文化センター(演劇ホール)
入場料:S席 5,000円(当日券5,500円)/A席 3,500円(当日券4,000円)/車椅子・介護席 3,500円(当日券4,000円)