NAMSTROPS 彼らが逆さから見る世界(前編)

今日伺ったのは、宮崎市吉村町にある『透明体育館きらきら/国際こども・せいねん劇場みやざき』(CandYシアター)。結成から15年目を迎えた、“逆さにこだわったコンテンポラリーダンスカンパニー”『んまつーポス』のみなさんに会いにきました。『SPORTSMAN(スポーツマン)』を逆に読ませているというこの団体名にも、彼らの活動を裏付けるエピソードがつまっています。

「僕らはみんな、ダンスとの出会い方が良かったんだと思います。そうでなければ仕事にしたいと思うほどは熱中してはいなかったかもしれないですね。」

そう話してくれたのは代表の豊福彬文さん。主要メンバーである豊福さん、みのわそうへいさん、児玉孝文さんの3人が在籍していた宮崎大学教育学部での思い出から、これまでの活動、そして今回、国文祭・芸文祭みやざき2020で上演される『んまつーポス(日本)×UnlockDancingPlaza(香港)「空想運動会」コンテンポラリーダンス公演』についてお話を伺いました。

出会いが固定概念をくつがえす

2006年、児玉さんとみのわさんによって立ち上げられ、今年15年目を迎えたコンテンポラリーダンスカンパニー『んまつーポス』。豊福さんは当時、宮崎大学在学中で、『そのまま教員になるか、アーティストになるか、どんな仕事をしよう?』と考えていたところだったのだそうです。(その後2010年、同カンパニーに加入)。

「僕ら3人のダンスとの出会いは、宮崎大学教育学部で、舞踊教育学を専門に研究されている高橋るみ子先生のゼミに入ったことがきっかけでした。高橋先生は学校教育でいう創作ダンス、社会でいうコンテンポラリーダンスを研究されている先生。多くの作品を創られていて、それを大学の先輩方が嬉々として踊っている様子を初めて見た時、『想像していたのと違う!なんだこの不思議な感じは!?』と衝撃を受けたんです。僕らのチーム名が『スポーツマン』の逆さ読みで『んまつーポス』というところとも繋がってくるのですが、『スポーツマンが、舞台でスポーツしてる!』と感じたんですよね。スポーツにはたくさんの美しいシーンがある。そのシーンを舞台で再現しているような感覚で。それを目の当たりにした時に、自分の中にあったダンスというものの概念が変わったんですよね。」

“ピッチでサッカー”と“舞台でダンス”は一緒?

高橋るみ子先生との出会いで、「僕らがやってきたこと、やりたかったことはこれなんだ!」という感覚を共有できたのが、現在のメンバーだったのだそう。舞台に上がって、それまで自身がスポーツのフィールドで表現してきたものは全て、“パフォーマンス”だったのだということに気づいたのだという豊福さん。そのルーツは、幼少期の習い事にまで遡ります。

「6歳からブラジル人のコーチにサッカーを習っていました。ポルトガル語で準備運動したりしていてめちゃくちゃかっこいい感じだったのですが、所属していた6年間、一度も試合に勝ったことないんですよ(笑)それでもがっかりしたことは全くなくて。負けても、『今日も楽しかったね』とみんなニコニコで帰って行く感じ。逆に僕らに勝ったチームの子たちが怒られたりしているのを見て『なぜ?』と不思議に思っていました。」

スポーツが好きになったきっかけも、出会い方が良かったのだと振り返る豊福さん。他にも相撲やフィギュアスケートなどのスポーツを習う中で、勝ち負けではなく「身体を使って何かを表現する」ことの楽しさを教わったのだと振り返ります。その感覚はメンバーであるみのわさん、児玉さんがそれまでに感じてきたことにも、少なからず通じるものでした。

「スポーツとダンスはかけ離れたものとだと思われがちですが、僕らにとってはスポーツをするのと舞台で踊ることはとても似ているんです。お客さんに向けて身体能力を魅せる、といった点では全く同じだと言ってもいいんじゃないかな。」

1人では解決できない課題

『透明体育館きらきら/国際こども・せいねん劇場みやざき』で第13回キッズデザイン賞(2019年)の「子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン部門」経済産業大臣賞受賞するなど、国内外から注目を集めている彼らですが、実は、その教育メソッドは、全て学校の学習指導要領に示されているものを基準としており、学校教育の中で「創作ダンス」は、「小集団で、正解のない課題(ダンス作品)に創作的・創造的に取り組む活動」という定義なのだそう。

「つまり、1人では取り組むことのできない課題。1人の振付家と5人のダンサーならそうはならないのですが、創作ダンスはみんなが振付家なんです。だから、予想できないことが起きるんですよね。でもそれが創作ダンスの醍醐味なのかなとも思っていて。それぞれがそのテーマについて考えた時に、どんなものがでてくるのか。それぞれが「空想×運動会」というものを想像した時に、どんなものを作りたいか、表現したいかを考え、一つにした結果が今回の作品なんです」

舞台上に“余白”を残す

「スポーツでは、何が起きるかわからない。僕たちはスポーツマンだから、舞台に上がるときにも試合感覚で『あの人がそう動くなら僕はこうしよう』という“遊び”の部分を残しておく。」豊福さんたちはそんな風に考え、舞台上での出来事を全てコントロールしようとはせず、必ずどこかに“余白”を残しておくのだそうです。

「コンテンポラリーダンスでは、振付家とダンサーがいて、ダンサーは、振付家が振付けた動きやふりをしっかり覚えて踊るというのが一般的です。でも僕らが取り組んでいるのは、覚えるダンスではなく、新しい考えやふりをどんどん取り入れて、みんなで創る舞台芸術なんです。香港のダンサーたちは、『ダンスって、自分たちのアイディアを出していいものだと思わなかった、ダンスが好きで仕事にしたのだということを思い出したよ』と言うんです。その言葉を聞いたとき“余白を残しておく”という僕らのスタンスが、彼らの価値観を揺さぶったんじゃないかなと感じました。今回の『空想運動会』が、彼らと共同で創作する舞台の4作品目。また面白い作品になるのではないかと、僕たちも今からワクワクしています。」

後編に続きます!