5・7・5・7・7で表現する豊かな日常(後編)

今回お話を伺ったのは宮崎県歌人協会に所属しながら、江南書房という名前の版元を運営している二宮信さん。前編では「みやざき神話のふるさと短歌大会」への思いや、運営事務局となる宮崎県歌人協会について話を伺いましたが、後編では二宮さんのルーツや、盲目でありながらも生涯歌を詠みつづけたお父さまとのエピソードについて詳しく伺いました。

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短歌につながったご縁

二宮さん自身が歌を詠み始めたのは、偶然にもお父さまが歌を詠み始めたのと同じ、40歳頃。仕事で歌集を作っていたことがきっかけでした。歌集の編纂に関わっていた先生の1人に「うちの団体に入りなさいよ。」と声をかけられたのだそうです。

「23歳から16年間、宮崎市にある印刷会社の鉱脈社で営業職、自費出版の部門で働いていました。そこで歌集を作らせていただいたりしていたんですね。その後は独立して、『江南書房』という版元を立ち上げました。この仕事は商売というよりは、喜んでもらえるのが嬉しくて続けている感じでしょうか。自費出版や、自分の表現をまとめたいという人のお手伝いをさせていただいています。自分で本を作りたくても、どうまとめていいかわからないという方も少なくない。印刷は印刷所に依頼することもありますが、レーザープリンターを借りて自分でやったり、製本もします。その人が詠んだ数多くの歌を、カテゴリに振り分けていくことでその人自身の深層にある考えがわかってくる。だから歌集を作るときには、編集の作業がとても大事になってくるんですよね。」

歌人だった父との共通項

短歌を通して「表現」することを、編集や印刷を通して手助けしたいという二宮さん。とにかく短歌が好きで、40歳で始めてから現在までの20年以上、習慣のように詠み続けているのだそうです。やはりそのルーツは、盲学校で国語の先生をしながら歌を詠み続けていたというお父さまにあるのでしょうか?

「父は宮崎県出身の歌人、若山牧水が大好きでした。生まれつき目が見えなかった訳ではないので、山登りにもよく連れて行ってもらったり、週末は1人でよくニシタチに飲みに出ていたのを覚えています。点字出版社を立ち上げるなど、とても活動的な人だったと思いますよ。ただ、目が少しずつ見えなくなっていく中で、やけになったりすることもあったようで…でもそういった経験があるからこそ、興味深い作品も多く残していると思いますね。当時、父は盲学校の国語教師として勤めていました。当時受け持っていた学校の生徒たちにも短歌を教えていたようです。」

お父さまは、自身の作品を、点字の本として残されていたのだそう。活版印刷の点字の本は、通常の本よりもかなりの分厚くなります。そのため言葉に起こして1冊にまとめた方が、きちんと保存していけるのではないかと考え、点字ではなく通常の本として、お父さまの作品を3年前に二宮さん編集のもと1冊の本として刊行されたのだそう。

毎日の中にある芸術

二宮さん自身の考える短歌の魅力について聞いてみると、とても納得のいく答えが返ってきました。

「短歌はもちろん、とても文化的な活動ではありますが、一方で日記のように日常的に続けていけるものでもあります。短歌の世界へ誘っていただいた先生は、95歳でお亡くなりになるまで、短歌のことを考えられていました。あとは、仲間ができるのが楽しいですよね。自分が見た景色や感じた気持ちを、歌会で仲間たちと共有し、フィードバックしあえる事も嬉しい。コロナ禍の今では、郵送などでやりとりしていますが、早くいつも通り、集まれる日が来てほしいなと思います。」

最後に二宮さんに、今後どのような人たちに短歌に興味を持ってもらいたいですか?と伺うと、「若い世代の方達にもぜひイベントに来ていただきたい」とのこと。

「高校でも短歌甲子園があったりするので、学生さんにももちろん参加していただきたいですね。教育という観点からいっても、とてもいい影響のある文化だと思います。たったの1首だけでも作品なんです。小説ともなると、原稿用紙でたくさん書かなきゃいけないけど…たったの31文字で、後世まで長く名を残している歌人もいる。牧水さんもその1人ですよね。短いからこそ、忘れられない。そこも短歌の魅力の一つかもしれませんね。」

と話してくださいました。二宮さんのおっしゃる通り、31文字という制約があるからこそ、芸術表現としての奥深さが生まれるのかもしれません。このごろはテレビなど様々な場所でもフォーカスされはじめている短歌の世界。当日は歌人の小島ゆかり氏による講演会や、受賞作品への講評なども聞くことができます。これをきっかけに、新たな世界を知ることができるのではないでしょうか?

「みやざき神話のふるさと短歌大会」はどなたでも観覧できます(無料です)が、事前申込が必要です。コロナ対策のため人数制限をしています。入場申込は、みやざき神話のふるさと短歌大会実行委員会事務局(二宮)あてに、ご連絡ください。
(申込先)kouan1998_2014@yahoo.co.jp/090-1362-4692