子どもと作るバレエの未来(後編)

宮崎市内から車で30分。海岸線沿いに車を走らせ、山あいの細い道を抜けていくと、宮崎市立青島中学校が、遠く緑の合間に見えてきます。

今日ここまでやって来たのは、国文祭・芸文祭みやざき2020さきがけプログラム「みやざき洋舞フェスティバル2020」の練習を見学するため。

後編では引き続き、マスダモダンバレエアートの益田陽子さんに、「みやざき洋舞フェスティバル2020」への想いについて、話を伺いました。

創作バレエの魅力を宮崎でも

今回「みやざき洋舞フェスティバル2020」で披露されるのは、総勢約70名による創作バレエ。前編でお話があったように、創作バレエでは脚本や衣装など全て自分たちで作られるそうです。他県からジャズダンスやモダンコンテンポラリーなどで参加されるところもありますが、宮崎チームは約7年前から「宮崎でやるなら宮崎出身のダンサーである西島数博先生に振付を頼まないと」と話されていたそうで、西島さんにもその話をお伝えし続けていたそうです。宮崎での国文祭・芸文祭が決定し、今年が記紀編纂1300年記念事業最後の年でもあるため、古事記を題材とした創作バレエを西島さんが手がけることになったそうです。

参加することを決めたきっかけは、 過去、千葉・鹿児島・大分で行われた国民文化祭への参加で地元のエネルギーと、それに参加する子供たちの成長を間近でみていたため、以前から”宮崎でやる時には絶対に参加したいよね”という話を重ねてこられていました。

神、森羅万象を表現するダンス

「 第一部は宮崎県内のクラシックバレエ・モダンバレエの団体が黒木梓氏の脚本と映像のもと、宮崎の海と空と太陽を表現した作品発表。第二部は全国のクラシックバレエ・ジャズダンス・コンテンポラリーダンスの団体による作品発表。第三部はオーディションで選ばれた宮崎県内のクラシックバレエ・ モダンバレエの団体・個人の合同での作品発表です。
そして第三部は、西島先生が、新作として古事記を題材に、アマテラスオオミカミやウズメノミコトとスサノオノミコトが登場する内容ですが、それらの神様だけが主役ではなく、あくまでそれらを取り巻く森羅万象を表現するため、時、生命、風、人、それぞれが登場する舞台に仕上げられました。」

今だけしかできないチーム

益田さんたちがこのような形で、 イベントにおいて大規模な合同作品を発表されるのは 約20年ぶり。各バレエ教室のみんなが協力しあって、和気藹々としながら一丸となって参加する独特の雰囲気が、 益田さんはとても好きなのだそうです。しかし今年はコロナの影響で、そうはいかなくなってしまいました。今年このまま参加するかどうか、 なんどもなんども話し合われたそうです。

「学生で受験を控えている子もいるので、来年に持ち越すと半分くらいメンバーが変わってしまう。去年の8月にオーディションが始まって、それからみんなでコツコツ練習して来たのに…って。更に来年になると西島先生や舞台監督の先生、照明・監督音響監督の皆さんのスケジュールも難しくなってくる。どうあがいても、今のチームでできるのは今年だけ。だから、やるのであれば、このチーム、 このメンバー でがんばってみようという結論を出しました」

主要な登場人物であるアマテラスオオミカミを演じるのは、東京シティバレエ団のプリンシパル。アメノウズメ役は、現代舞踊の若手ダンサーの方です。どちらも宮崎の子供たちに知ってほしい踊り方をしてくれるプロのダンサーで、都会の現代舞踊の動きを間近で見ることができることはそうないため、このチャンスを逃して欲しくなかったのだと、益田さんは話してくれました。

指導者として、何を伝えられるか

マスダモダンバレエアートは今年で創設から71周年。益田さんには、”自分の代で途絶えさせるわけにはいかない”というプレッシャーがありました。

「しかし母は私の性格をよく知っているので、『無理に継がなくてもいいよ』って言ってくれていたんですよね。それでも徐々に手伝う範囲が広がって、気がつけば宮崎に戻って来た。子どもたちの成長の手助けをする仕事ができるのが、嬉しかったんですよね。今から教職にはつけないけど、指導者として教育に関わることはできないだろうかと考え始めたんです。」

「うちのバレエのレッスンは 礼儀作法から言葉遣いまで厳しいです。 時々笑いも取りますが(笑)でもそのレッスンを受けて育った子どもたちが、うちを卒業して社会に出てとき辛い思いをした時『こんなのなんてことないや』と、気持ちを強く持つことができる。それが自信に繋がっていくんですよね。そういう意味合いでも、1人の人間を育てていくお手伝いができるってすごくない? って思いはじめて、 次代の担い手を育てて行きたいという思いが強くなりました。」

「表現できるということは、人間にとっての宝。色々な事柄が簡易化され、便利になっていく世の中でも、例えば独創的な振り付けを考えたり、子どもの感情を見抜いた上での指導をするのは人間だからこそできること。指導者として、子どもたちに、”踊りで表現することの素晴らしさを伝えたい”」と益田さんは続けます。

「『自分の思いを乗せる』『相手の熱意を汲み取る』、というのは、やはり人間じゃないと無理だと思うから。いつもの教室と違う環境で、ダンスでの成長だけじゃなく、気配りができて、誰とでも仲良くできて、挨拶ができて。そこから人間的な成長もして欲しいなという思いです。国文祭・芸文祭が終わった後、子どもたち自身がやってよかった、がんばってよかったと思ってくれたらいいかな。子どもたち一人一人、それぞれが成長を感じて教室を卒業していってくれたら、参加した甲斐があるんじゃないかなと思います。」

先生方の熱い思いに答えるように、子どもたちも粛々と練習に励んでいる様子がとても印象的でした。「みやざき洋舞フェスティバル2020」の開催もいよいよ今週末! みなさんもぜひ、会場に足を運んでみてください。

「みやざき洋舞フェスティバル2020」
期間:2020年11月1日(日)
開場:13時00分/開演:14時00分
会場:宮崎市民文化ホール 大ホール
入場料:2,000円